top of page

温かい物を持つと相手が魅力的に見えてしまう??

2019/1/09 追記

本研究に関しては以下のように繰り返し追試がなされていますが,結果としてその多くが再現に失敗しており,信憑性は低下しています。この点についてご勘案の上,記事を御覧ください。

・Lynott, D., Corker, K. S., Wortman, J., Connell, L., Donnellan, M. B., Lucas, R. E., & O’Brien, K. (2014). Replication of “Experiencing Physical Warmth Promotes Interpersonal Warmth” by Williams and Bargh(2008). Social Psychology, 45(3), 216-222.

・Chabris, C. F., Heck, P. R., Mandart, J., Benjamin, D. J., & Simons, D. J. (2018). No Evidence That Experiencing Physical Warmth Promotes Interpersonal Warmth. Social Psychology, 1-6.

 

「あの人なんか冷たくなーい?」「一緒にいるとなんかあったかいっていうか...」

みなさんもこのような会話を耳にしたり言ったりしたことありますよね。ここでいう心理的な「あたたかい」という印象は,「親しみが持てる,助けてくれそう,信用に値する」などといった好ましい特性の集合のことを言いますが、私たちは他人に対してこの「あたたかい」「つめたい」という評価を直観的にしかも積極的に行う傾向にあります。

同調効果などでも有名な心理学者のソロモン・アッシュによると「あたたかさ(warmth)」という特性は他者の社会的判断における最も強い個人的な特性であり,第一印象において相手が信用できる人かそうでないかを決める最も強い要因でしかもこの査定は判断者の無意識のうちに自動的に行われるものだそうです。このことからも「あたたかい」「冷たい」という特性による評価は誰しもが無意識に行っており,この他者の印象はその人の評価に大きく響くものだと言えるでしょう。

ですがこの人の評価に大きな影響を与える「あたたかい」という感情。操れる方法があったら最高ですよね。実はこの「あたたかい」という感情を操る方法があるんです。

驚くべきことに,この“心的”な「あたたかい」という感情は“身体的”な「あたたかい」という経験に影響されてしまうことが実験によって明らかにされました。

身体的な「あたたかさ」と心的な「あたたかさ」の両方の情報を処理する島皮質という大脳の一部の働きに着目した研究者であるウィリアムズらは,単なる身体的な「あたたかさ」の触覚的情報が心的な「あたたかさ」の考えや感情を刺激すると仮定し,二つの実験を行いました。

一つ目の実験では身体的な「あたたかい」「つめたい」という体験が実験参加者のターゲットの人に対する質問紙による評価に影響を与えることを証明しました。

大学に在学中の学生41名(白人の女性で平均年齢18.5歳)を質問紙調査の参加者であり、一人ずつ実験室に行くよう促されているのですがその途中でコーヒーカップ(「あたたかい」もしくは「つめたい」)とクリップボード,二冊の本を持っている研究員と出会います。四階の研究室にエレベーターで上る間、協力員は参加者に名前や参加時間等を書き込むために,コーヒーカップをもってもらうよう促し,書き込みが終わるまで参加者にもってもらいます(これが身体的温度の体験)。

つまり,ここでコーヒーカップを手渡された参加者は「あたたかさ」の身体的体験,冷たいコーヒーカップを手渡された参加者は「つめたさ」の身体的体験をすることになります。そして参加者が研究室に到着すると,個人的感情についての質問紙が入った封筒を渡され,そこには「“personA”は聡明で,器用で,勤勉で,頑固で,現実主義で用心深い」という情報が書かれており,それを読んだ後,10個の個人的特徴に対する質問に答えます。この質問のうちの半分は「あたたかい」(親しみが持てる、助けてくれそう,信用に値するなど)「つめたい」(親しみが持てないなど「あたたかい」特性の逆)に関係したものであり,もう半分はそれとは関係ない質問で構成されています。

そしてこの実験の結果,温かいコーヒーを持っていた人の方が冷たいコーヒーを持っていた人よりも”personA“のことを「あたたかい人」(信頼できてやさしくて親しみが持てる)だと評価したという結果が得られました。数字の話をするとあたたかいコーヒーカップを持っていた参加者の「あたたかい」「つめたい」に関係した5つ質問に対する回答の平均値は4.71で、冷たいコーヒーカップを持たされた参加者の解答の平均値は4.25でした(質問は1〜7の五段階評価)。 これは有意差の認められる数字であり、しかも「あたたかい」「つめたい」に関係しないもう半分の5つの質問には有意差は見られなかったのです。このように全く同じ人物で全く同じ情報をあたえられていたのにこのような結果がでたのはやはり事前の身体的な温度に関する体験(ホットもしくはアイスのコーヒーカップを持たされる)がその後の他人の「あたたかい人」「つめたい人」という評価影響をあたえたということがいえるからでしょう。

しかし,おもしろいことに身体的な「あたたかい」「つめたい」といった経験は他人の評価だけでなく他者へのふるまいにまでも影響を与えるらしいのです。

2つ目の実験によってこのことは示されています。この実験では参加者53人が医療用パットの製品評価という名目で温かいパットもしくは冷たいパットを貼っていて,それらのシップの効能の評価をした後に,この製品評価に参加した報酬を選ばせるというものです。

この報酬は炭酸飲料水もしくは地元のアイスクリームショップの1ドル分のギフトカードの2つが用意されており、そのどちらかを選んでもらうというものでした。ここでこの2つの報酬は友達用と自分自身用の人が均衡するような選択肢であるという工夫がされています。

この実験の結果,温かいパットをつけていた参加者の方が冷たいパットをつけていた参加者よりも友人用に報酬を選ぶ確率が高かったのです。つまり,この実験から,他人への「あたたかい」という評価だけでなく,振る舞いまでもが身体的経験によって影響され,「あたたかい」ふるまいになるということが示されました。

このように私たちの心的な評価やふるまいは身体的体験と密接に関わり合っており,意外にも簡単にしかも無自覚のうちに影響を受けてしまうんですね。興味深い話です。よって他者から好印象をもたれたい!モテたい!というときはさりげなく温かい飲み物をおごってあげたりして身体的な「あたたかさ」の体験を意図的に相手にさせるてみるのも一つの手なのかもしれませんね。また,なんだか気が立って攻撃的な気持ちの時や「オレ自己中心的だな~」と感じるときは温かいスープなどを飲むと優しい気持ちになり「あたたかな」ふるまいが出来るのかも。少なからず心的な「あたたかい」感情に影響を与えるとおもいますよ。

ですが,たとえあまりよくない効果が得られたとしても責任は負いかねますので・・・

出典:Williams, L. E., & Bargh, J. A. (2008). Experiencing physical warmth promotes interpersonal warmth. Science, 322, 606–607.


Contact Us

メッセージを受信しました

bottom of page