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色のイメージが温度感覚にも影響する!?

「赤=温かい、熱い」「青=冷たい」というイメージは、多くの読者の中にあるのではないだろうか。自動販売機の「あったか~い」は赤い背景、「つめた~い」は青い背景に白い文字で書かれている。それは創作物のキャラクター性を表現する場合においてもある程度共通している。スーパー戦隊シリーズでも赤は情熱的でまっすぐなキャラクター、青はクールでニヒルなキャラクターとして描かれがちである。このように、感覚的にしか捉えられていなかったこれらの関係式が実際の人間の触覚でとらえられるという研究が、NTTと大阪大学の研究チームによって行われた。

ここで、この記事を読んでいる人のおよそ5%はこの話に同意していただけないかもしれないということを先にお断りする。というのも、この記事は全世界のおよそ95%の人々が共通して持つ色についての感覚を前提とした研究をもとに書かれているからだ。じゃあその5%の人々はどうなるのだ、と憤る方もいらっしゃるだろうが、ひとまず話を先に進めさせていただきたい。

先に述べた「赤=温かい」「青=冷たい」という感覚についてはすでに研究が行われているが、非接触形式、つまり赤や青の物体を見て被験者に「これは何度くらいだ」と答えさせる実験しか行われていない。そこで、実際に物体に触ったに感じる温度がどうなのか、さらには手の色が赤いときと青いときでは違いがあるのか、ということを調査するためにこの研究が行われた。

まず、赤色と青色の物体に触れたときの温度計測の実験(以下、実験1)から説明を行う。被験者は目を開けて赤色、青色の物体をそれぞれ触った。実験者は被験者の「もうすこし温度を上げて(下げて)ください」といった申告に応じて物体の温度を調節した。

次に、手が赤いとき、青いときの温度計測の実験(以下、実験2)について説明を行う。この実験では、被験者の手に赤、青それぞれの色の光を当て、同じ色の物体を触った。物体色が異なるときと同様、被験者は「この物体は何度だと思うので、温度を上げて(下げて)ください」という返答をした。いずれの実験でも、目を閉じて、つまり色についての情報がない中で物体の温度を決める実験が対照実験として行われている。

その結果を示したのが以下の図である。

このように、実験1では物体色が赤いと物体を「温かい」と感じるのに必要最低限の温度が高くなり、青いとその温度が低くなっている。また、実験2では手の色が青いと物体を「温かい」と感じるのに必要最低限の温度が手が赤い場合と比較して低くなっている。確かに冬場は手の色が比較的青っぽくなる。それによって自動販売機で缶コーヒーを買ったときに思った以上に熱く感じた、という経験をした読者の方もいらっしゃるのではないだろうか。

ここで、冒頭の「この記事を読んでいる人のおよそ5%はこの話に同意していただけないかもしれない」ということについて、筆者のブレーキの効く限りで説明しよう。

「色覚異常」という言葉を聞いたことはあるだろうか。「色盲」や「色弱」といった言葉のほうが読者の皆様にとっては馴染み深いかもしれない。

もともと人間の目には赤、緑、青それぞれの色を認識する細胞がある。そのうち主に赤と緑の細胞のどちらか一方が欠損していたり、あったとしても働きが弱かったりして、その色が3色を認識できる人(3色覚者)と同じように認識できないということがある。図で示すとこうなる。

日本人のおよそ5%が色覚異常を持っているが、この記事を読んでいる大半の方は「えっ!?これが赤色なの!?」と驚きを感じたことだろう。この図の「赤」から果たして「温かい」というイメージが起こるだろうか。

「なーんだ、たったの5%じゃん。説明する必要とかあるの?」と思ったそこのあなた。ちょっと自分のクラスや職場にいる人の数を思い浮かべていただきたい。たとえばクラスメイト(もしくは職場の同僚)が40人いたとしよう。そのうち5%が色覚異常を持っているとすると、クラスや職場にいるうちの2人は色を正しく認識できていないということになる。5%と言われると大したことないように思えるかもしれないが、実際無視できない数字で色覚異常者は存在するのだ。

この話をより深く突き詰めていくと、色覚異常を持つ人にとっての赤色のイメージはどうなっているのか、「この物体は赤い」と言われて温かいイメージを持つかどうか…など、考えるべきこと、実験すべきことはたくさんある。しかし、これについて考え出すと筆者の卒業論文、いや修士論文が書けるレベルである。もしかしたら研究者としてのライフワークになるかもしれない。それは言い過ぎか。

この研究では、「赤=温かい」、「青=冷たい」というイメージが実際の温度感覚にも影響を及ぼすことが明らかにされた。今後、色と温度感覚の関連性は、今後の研究でさらに解明されていくことだろう。そうなれば「赤い手袋で彼女と手をつなぐといい」だの「赤いコップに温かい飲み物を入れて渡せばモテる」だの、恋愛方面にいろいろと使われてしまいそうである。心理学の研究で解明されたことをすーぐ恋愛と絡めるのもなんだかなぁ…と思いながら筆を置かせていただく。

出典:Ho, H.-N., Iwai, D., Yoshikawa, Y., Watanabe, J., Nishida, S. (2014). Combining colour and temperature: A blue object is more likely to be judged as warm than a red object. Scientific Reports, 4, 5527.


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