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不誠実は賢い???

2019/1/09 追記

本研究に関しては正確な追試でない可能性は残るものの,再現に成功したことが報告されています。ご参考までに。

・Galang, A. J. R., & Henson-Morales, M. R. (2018, October 18). Creativity and dishonesty replication. https://doi.org/10.31234/osf.io/c7qnh

 

ウソばっかり言う、借りたものを返さない、約束した待ち合わせ場所の時間通りに来ず、必ず遅れてくる友人。こんな友だち嫌ですけど僕の周りにはこんなひとばっかりです泣。(じつは自分も...)

しかし、この「約束を破る」、「嘘をつく」といった不誠実という性格は実は悪いことばっかりじゃないんです。いくつかの研究により、不誠実さは創造性、クリエイティブさと深く関わっていることが明らかにされました。

つまり不誠実なひとは人よりも想像力があるクリエイティブな人材というわけです。(信じたくないけど)考えてみると、不誠実さと創造性は”既存のルールを破る”という点で共通していますよね。こじつけとも思えるこの関係ですが、クリエイティブさは不誠実さを引き起こしうることは既に多くの研究者によって証明されています。

では逆はどうでしょう。不誠実さはクリエイティブさを高めうるのでしょうか。 今回の研究ではこの「不誠実さが創造性を引き起こす」ことと「不誠実さ」と「創造性」の二つの間にある心理的メカニズムを明らかにすることを目的とし、これらを五つの異なる実験によって検証しました。

実験1、2、3では、不誠実な行動:より良い実験報酬や己の利益のために自分の実験結果を上乗せして報告すること(嘘の報告)が、後の創造性を測るテストの結果にどう影響するのかを調べました。実験結果を自分で報告するようにしていますが、その実はパソコンでしっかり記録を取っており本来の結果がわかるようになっています。つまり、どの被験者がどのくらい自分の実験結果をちょろまかして報告したのかがわかるということです(ちょっと怖いですね笑)。また、創造性を測るテストにはRATが用いられました。これは基本的に関連があると思われる単語の間の関係性を判断する能力を測るテストで、被験者は提示された三つの単語に論理的に関連があると思われる単語をできるだけ早く答えないといけません。また、このテストでは一般的ではない関係性(一見すると何が関連するのかわかりづらい)を問われるので、この点でRATテストが出来るということは既存のアイデアにとらわれない思考が出来る=創造性が高いと言えるのです。

また、これらの実験では被験者が嘘をつきやすいように少し工夫をしています。実験1、2では正解数に応じて報酬額を増やすことを被験者に伝えており(金に目がくらむ??)、さらに実験2ではパソコンの下に答えが表示するというバグが発生するようになっており、それを消すかそのままにするかは被験者に任せるという工夫を行っています。実験3ではアナグラム課題をさせこの課題の結果は後のキャリアの潜在的能力と密接に関係することを伝えています。これに加え実験3では結果の目安を実際よりもかなり高く伝えており、ほとんどの被験者が本来の結果なら一番下のレベルになるように工夫してあり、これを伝えることで被験者の結果の上乗せをさらに促しています(焦って嘘をつきやすい??)。  

実験の結果、実験1では59%、実験2では95%そして実験3では40%の被験者が結果を上乗せして報告しました。不誠実な奴らばっかりですね。そして、その後のRAT結果はなんとすべての実験において結果を上乗せした(虚偽の報告をした)被験者の方が嘘をつかなかった被験者よりも有意に高かったのです!!このことから、「不誠実さが創造性を引き起こす」というのはどうやら信憑性がありそうですね。※余談ですが嘘をついた割合を見るとやはり報酬額(お金)が絡んだ方が高いですね。

また、実験4、5では、「なぜ嘘をつくことは創造性を高めるのか」を明らかにすること に焦点を当てています。実験4では、嘘をついた被験者がどれだけルールに縛られていないのかをこれまでの創造性を測る実験と併せて明らかにしています。ここではまず、被験者にパソコン上でコイントスをして裏か表か当てるテストをしてもらいます、コインを投げる前に裏か表かどちらかのボタンを押してもらい、合っていたら正解するごとに報酬が1ドルもらえるのですが、ここでも結果は自己申告なので被験者はいくらでも嘘の報告をすることができます(もちろん本当の結果はパソコン上で記録しています。)その後、三枚の写真(写真○)を被験者に見せ、「もしあなたがこれらの写真でしめされた状況にあるとしたらどのくらいその写真で示されてあるルールを気にしますか?」という質問に1(全く気にしない)-7(非常に気にする)の7段階で答えてもらいました。その後、同様にRATテストを行いました。

実験の結果、やはり結果を上乗せした被験者の方がRATのテスト結果がよかったのですが、それだけではなく嘘をつかなかった被験者よりも写真上のルールを気にしない(とらわれない)という結果が得られました。しかも、嘘をつかなかった人の平均が5.28なのに対し嘘をついた人の平均は3.66とかなり差があることがわかりますよね!この実験から、嘘をつくという行為はルールにとらわれないという感情と関連が強いことが明らかになり、つまりはルールに縛られない➡だから創造性が高くなったという構図が証明されました。

みなさんいかがでしたか? これらのことより、本当に「ルールに縛られない」という感情で共通している嘘をつく(不誠実)と創造性は深く結びついており、不誠実な行動は創造性を高めうるのです。ルールは破るためにある”という言葉がありますが、これは悪ガキが自分の不誠実さをごまかすための詭弁としてだけでなく、創造性を高める格言としての役割もあるんですね。 ルールを破る、嘘をつくといった行動は一概に悪い行動だととらわれがちですが、見方を変えればポジティブな見方もできるのかもしれません。 また、今回の被験者はすべて海外の人だったのですが、日本でも同じ結果が得られるかは疑問であります。 個人的には日本人は良くも悪くもルールに忠実なイメージがあるので、全く異なった結果がでるかもしませんね。 というかそうあってほしいと願うばかりです(笑)。

出典:Gino, F., & Wiltermuth, S. S. (2014). Evil genius? How dishonesty can lead to greater creativity. Psychological Science, 25, 973-981.


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