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透明人間になったら不安を感じなくなる?

H.G.ウエルズThe Invisible Man (1897) という小説を知っていますか? ある科学者が自分の発明した薬物を飲んで透明人間になりやりたい放題悪さをするようになるという話です。人の目を気にしなくてよくなること。。。それは一体私たちにどのような影響を及ぼすのか。 今回の実験は「透明人間になると社会不安が減るのでは???」というテーマのもとで行われた実験です。

Figure 1. 透明人間

では一体どうやって透明人間になるのか?答えは錯覚です。 ヘッドマウントディスプレイにより3D映像を被験者に見せます。パターン1ではカメラをマネキンの被験者と対応する位置 (頭) につけます。この場合自分の体としてマネキンが映ります。パターン2 (Figure 2) では被験者の目線と対応する何もない空間にカメラをつけます。

Figure 2. 研究の共同著者Zakaryah Abdulkarimさん(中央)が,両目の役割をする2台のカメラ(右)と接続されたヘッドマウントを被験者(左)につけてもらい,透明な身体になったような風景を見せているところ

※画像はこちらより

この場合自分の体がないように見えます。このときブラシで被験者の身体に触れ対応する場合にブラシで触れます。すると自分の透明な体が触れられているように錯覚するのです。そう!これが透明人間のからくりです。

実験ではパターン1とパターン2の状態でナイフを当てたり見知らぬ人の集団の前に立たせどう心理状態が違うのかを調査しました。結果はパターン1よりパターン2のほうがナイフをあてられたときや見知らぬ人の集団の前に立たされたとき心拍数が少なく,主観的なストレス度が低かった,つまり透明人間になったほうが社会的不安が少なかったのです!!!

Figure 3. それぞれナイフ,ブラシをあてられたときのパターン1の人から見た光景 (左),パターン2の人から見た光景 (右)

※ 画像は元の論文 (Guterstam et al., 2015, Sci. Rep.) より

この結果から透明人間の疑似体験がメンタルの治療に役立つのではと期待されてます。透明人間の状態でリハビリすることによりトラウマを克服したり人前で話すことに慣れさせたりなどです。俗にいうコミュ障を治すセラピー等に活用できるということです。

Figure4. 対人恐怖症

小説などでは透明人間になることは悪事に繋がりがちでしたが現実では有益なことであるということが分かりましたね。透明人間が身近になる日も近いかもしれません。あなたが透明人間になるのも近いかもしれません。。。

出展:Guterstam A., Abdulkarim Z., Ehrsson H. H. (2015). Illusory ownership of an invisible body reduces autonomic and subjective social anxiety responses. Scientific Reports, 5:9831


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