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でたらめ非対称性原理

心理学はとても誤解されやすい学問です。実証的に得られた知見を一般の方々に正確に伝えることが難しいのは他の学問と大きく変わらないのですが,そもそも一般的に広まっている「心理学観」が実態と大きくかけ離れていることが多いのです。この点については心理学教育や心理学的なサイエンスコミュニケーションに関する多くの議論がこれまでにあり,「何とかそれを払拭するために頑張ろうね」と声を掛け合っているに留まるのが現状です。

今回Natureに掲載されたコラムでは,Bullshit Asymmetry Principle(でたらめ非対称性原理;ブランドリーニの法則: Brandolini, 2013)について詳しく紹介されていました (Williamson, 2016)。これは,科学者が世の中に流布されてしまったでたらめを訂正するのにかかる労力は,そのでたらめを流布させる労力よりも常に大きいというものです。この原理は心理学において最も頻繁に観察される現象を実によく説明しています。心理学をタイトルにかかげる書籍は大量に出回っていますが,その多くが実際の心理学研究の知見に基づいていないか,あるいはその成果を大きく誇張したものです。こうしたでたらめな誤情報は害にしかならないので駆逐されるべきなのですが,それを行う研究者は多くなく,野放しになっているのが現状です。誰もそんなことに時間や労力を割くことができないでいるんですね。

とても大事な作業なのに見返りがなければ誰もやらないのか,とお叱りの声もあるのかもしれませんが,そう簡単には自発的行動も生起しにくいものです。この点について,今回のコラムはその検証作業をピアレビュージャーナルに掲載するという方法を示唆しています。これにより,でたらめを検証した労力が業績となることで報われるだけでなく,データや意見などを科学的コミュニティ内でシェアすることによって,その後の議論の発展を促すことができるようになります。一つの手として,そういった専門誌を創設するのも面白いのかもしれませんね。これはかつて,超心理学に対して創設された「Skeptical Inquirer」を髣髴とさせます。

イタチごっこはいつまでも続くのかもしれませんが,科学者がただ座視しているだけの時期は終わろうとしているのではないでしょうか。

※本サイトの公開している情報にも誤りはきっとあると思います。お気づきの方はいつでもご連絡ください。スタッフは正確性を高めるための修正を常に行っていく所存です。

Brandolini's law:


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