不安定な性格のあなたが結婚できる可能性を低めないようにするには
「温かい飲み物を持っているときは、相手をあたたかい人だと評価する」ことを明らかにした研究があるように,何らかの要因が印象形成や意思決定に影響を及ぼすことを示した研究はたくさんあります。
今回のこのコーナー『実験のお時間ですよ』で紹介する研究もその種の一つで,Daivid R.KilleとAmanda L.ForestとJoanne V.Woodの3人が行った「身体の不安定さが,対人関係の評価とパートナーの選好に影響するかどうか」の研究を見ていきたいと思います。
はじめに研究方法ですが,3人は独身の大学生47人をテーブルとイスが用意されたところに連れていき,ランダムに彼らを座らせるのですが,このテーブルとイスの中にはぐらぐらと揺れる不安定なものも用意されており,それによって
「身体が不安定条件下に置かれた人(不安定なテーブルとイスに腰を掛けた人)」
と
「身体が安定条件下に置かれた人(全く揺れない安定したテーブルとイスに腰を掛けた人)」
とに大学生を分けました。
そのような条件の中で,各自紙に書かれた課題に取り組みます。その課題の内容は,
(1)世間でよく知られている4組のカップル(オバマ夫妻など)が5年以内にどれくらい離婚しそうか
(2)パートナーに求める性格(安定・不安定)
について下の図のように7段階で評価するというものです。
(1)の場合,離婚するであろうと強く思う人は「7」に,全くそう思はない人は「1」 に,どちらともいえない人は「4」に丸をつけ,(2)の場合,安定を強く求める人は「7」に,全く求めない人は「1」に,どちらともいえない人は「4」に丸をつけます。
結果は,
(1)不安定条件の人は安定条件の人よりも,カップルの安定性について低く評価していた
(2)不安定条件の人は安定条件の人よりも,パートナーの性格として安定を高く評価していた
というものでした(平均や標準偏差などの具体的な数値は本文下にある本研究の論文を参考にしてください)
おしまい。
というわけにはいきませんね。このコーナーはある研究を紹介するだけでなく,その研究結果をもとに,読者が普段の生活でためになるようなメッセージをまとめの部分でするように求められているのであります。私はこのまとめの部分で頭を悩ますわけですよ。ほんとうにつらい。相当悩みました。苦悩の末でてきた,私からの皆さんに対するメッセージは
「不安定な性格のあなたが,付き合っている子と結ばれる可能性が少しでも''低くならないようにする''には,その子の身体を絶対に不安定にさせるな!」
です。お金がない・・・取り柄がない・・・という感じで不安定になっているあなたが遊園地デートに行き観覧車に乗ったとします。揺れる観覧車のなかで相手の身体は自然と不安定になります。そうすると,上の研究結果からもわかるように,相手は安定欲求が高まり,ふと考えます。 「こんな不安定な人よりももっと安定した人とじゃないとこの先不安だわ。」 そして,別れます。こわいですね。乗馬デートの場合も同じです。つなぎとめておくには,相手の身体に細心の注意を払う必要があるようです。
このように考えてみると,「相手の体に気を配ることができる(例えば大きな段差で瞬時に手を差し伸べることができる)やさしい人」というのは,「相手の身体を不安定にさせないように努力している人」と言い換えることができるかもしれません。無自覚に手を差し伸べることができるやさしそうな彼も、心の中ではいったい何を考えているのでしょうか。以上,『実験のお時間ですよ』のコーナーでした。
出典:Kille, D. R., Forest, A. L., & Wood, J. V. (2013). Tall, dark, and stable: Embodiment motivates mate selection preferences. Psychological Science, 24, 112–114.
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